お客様は神様か!?
「お客様は神様なのか!?」
美容室では毎日様々なお客様との出逢いがあります。物静かなお客様がいらっしゃれば、時には全くウマの合わないお客様もいらっしゃいます。ですので美容室に限らずサービス業を続けていけば必ずなにかしらの問題が起こります。それは当然のことであり、必然なのかも知れません。特に美容室の場合、初めての来店で自分のイメージや希望が全て叶うことはあるのでしょうか?実は前髪をあとほんの少しだけカットして欲しかった。シャンプーやマッサージの力加減が少し強く感じたけれど我慢した。などなど相手に言うほどではないと自分の中で決め込んでしまい、ついついその場をやり過ごす人が大多数でしょう。それは赤の他人と共存する為の最善策なのかも知れません。
しかし長年サービス業を続けていくと、無理難題を言われるお客様に必ず遭遇します。明日急遽出かける用事が出来たので今から対応して欲しい、朝から結婚式に出席するので早朝に髪をセットして欲しい、カットで予約したけれどカラーもしたい、など急を要する場合や営業時間外での対応を迫られる場合など、イレギュラーは突然やってきます。目の前にポン!と現れたイレギュラーに対し、難なく対応出来れば良いのですが、先約のお客様がいたり、始発や終電では対応出来ない時間帯だったり、毎回必ずこなせるとは言い切れません。予め言っておいてくれれば良かったのに!といつも思いますが、お客様自身も急に予定が入ったり、急に気分が変わったりするのでどうしようもありません。リベルトでは可能な限り対応致しますが、どうしても不可能な場合は丁重にお断りさせていただきます。ですが時に、こちらの予想をはるかに超える要望をされる場合があります。
とある商店街に店を構える美容室の話。
商店街の組合会長はカメラ屋さんを営んでいるのですが、どうやら人手不足のようです。美容室に行きたいけれどなかなか行くことができません。カメラ屋の営業が終わる頃にはどこの美容室も閉店間際でした。ある時閉店作業をしていると、同じ商店街組合の美容室の店長にばったり会いました。その時冗談のつもりで今からカットして欲しいと伝えたところ、美容室の店長は快く引き受けてくれたそうです。それからはカメラ屋を閉店する夜の8時から美容室に行くのが当たり前になって行きました。最初はカットだけだったメニューも、次第にカラーやパーマもお願いするようになりました。気がつけば夜の8時からだった開始時間も10時や11時にから行うこともあったり、美容室が休みの火曜日に店を開けてカットしてもらう事も多くなっていきました。カメラ屋の店主は最後に言いました。いい友達だよと。
美容室に限らずお店にはお店独自のルールがあります。店内が禁煙だったり、料理の写真撮影が禁止だったり、スマホ禁止のラーメン屋さんがあったり様々です。そのお店が決めたルールを守らないと退席や退店を求められたり、最悪の場合は出入り禁止になってしまうでしょう。お店が決めたルールは絶対なのです。中には写真を撮るくらいいいじゃないか、と思うかもしれませんが、撮影禁止のルールがあるお店では絶対にダメです。このようなルールをお店の所有者が決めることができる権利を施設管理権と言います。
そう、お客様は神様では無いのです。入店した直後からお店の決めたルールに従わなければなりません。その上でサービスが行われます。時には無理を言って普段行わないサービスをしてくれるお店もあるかもしれませんが、それはお店のご厚意です。ラストオーダーはいつも決まった時間に必ず訪れます。そのオーダーを無視することは決して許されず、場合によっては法的に裁かれてしまうかもしれません。
私個人的にはお客様の要望は全て叶えていきたいスタンスです。言いたくても言えないより、どんな事でも相談できる美容師になりたいと思います。普段言えない事を聞かせてもらう事によって、より満足感のあるサービスの提供につながると思いますし、お客様に信頼されている証にもなると感じるからです。
ですが、はじめからお客様は神様だ!と思っている人はお断りです。きっと仕事も捗りません。お客様は神様のように有難い存在だとは思っています。それはお店側の視点で、お客様からの視点ではありません。神さまが自分は神だ!とは言わないでしょう?自分は神だと言う人の心は悪魔より恐ろしいのです。神様とは他人から思われる概念なのかもしれませんね。
※このコラムはフィクションです。
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